Story
いつまでも子どもで、いつからか大人だった。
長沢樹太(大倉琉人)は、音楽教室を営む目の見えない母・花江(板谷由夏)のもとで、音楽とともに育った少年。美しい歌声を持つ樹太だったが、変声期を迎えたことで、自分の声だけでなく、これまで当たり前だった日常も少しずつ変わり始める。唯一心を許せる存在は、幼い頃からいつも一緒に過ごしてきた親友・大也(原田琥之佑)。近所で喫茶店を営むケン(笠原秀幸)の店で語り合う時間は、樹太にとって何より大切な居場所だった。しかし、樹太が胸の奥で抱いていた大也への淡い恋心は、大也が恋や将来へと歩み始めたことで行き場を失い、樹太は言葉にできない孤独と喪失感を募らせていく。
大也との関係の変化、そして母との暮らしにも閉塞感を抱えた樹太は、幼い頃から母の話の中で憧れを抱いていた、会ったことのない父・雷太(深水元基)を訪ねて東京へ向かう。父から届いた荷物の送り状に記された住所を訪れると、そこは風俗店が入る雑居ビル。戸惑う樹太の前に現れたのは、派手な装いの女性・舞奈(久保田紗友)。舞奈に導かれながら街を巡り、ついに父・雷太と再会を果たす。しかし、そこで待っていたのは、母から聞かされてきた父の姿とはまったく異なる現実だった。
変わりゆく声、揺れ動く恋心、そして初めて知る家族の真実――。
いくつもの「はじまり」と「さよなら」に出会いながら、樹太はこれまで知らなかった世界と、自分自身の心に向き合っていく。



隈本遼平 監督
身体も声も心も大きく変わっていく時期は、不安や戸惑いに満ちています。でも、その時間は二度と戻ることができないからこそ、美しく、愛おしいものでもあります。
この映画では、言葉にならない感情や、揺れ動くまなざし、その瞬間にしか生まれない空気を大切にしました。カメラの前で偶然生まれた出来事や、台本を超えてこぼれ落ちた表情も、そのまま作品の中に息づいています。
この映画が、皆さんにとって大切な誰かや、かつての自分を思い出し、「あの頃の自分も、今の自分も悪くなかった」と、少しだけ優しく思えるきっかけになれば、とても嬉しく思います。
灯敦生 脚本
脚本づくりって、変声期みたいだなぁと思いました。貴方の、はじまりのさよならは何でしょう。
物語に描いた変声期で移ろう少年が、映像と音楽のドリームチームによって強く、強く寄り添い見守られている……。隈本監督を筆頭に、関わった全ての人の眼差しを感じる試写でした。きっとご覧になった誰もが同じく、少年を見つめ、音楽愛をかき鳴らすのかもしれません。
SUPER BEAVERの大ファンで、sumikaやosageと作品ご一緒したり、ご縁のあるmurffin discs 映画に携われたこと自体、大感激でした。岡村Pの映画熱は凄まじいので、聞いた時は「ついにか!」と。
大倉琉人さんら役者陣の一つの季節が、美しいです。